納得いかないけど、「そんなもんなんだろう」とあきらめてしまう「敷金返還」…最近、上告審で、敷引(退去時に返還されない敷金の額をあらかじめ契約の時に定めておくこと)の無効判決が出たそうです。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200607260199.html
裁判というのは三審制度で、「原審」で出た判決に納得いかなかったら「控訴審」、さらに納得いかなかったら「上告審」まで審議してもらえる仕組みになってます。「上告審」は二審めまでとは違い、二審までの判決が違法でないかという視点で審議され、上告審で出た判決は、二審判決を支持するにしろ、逆の場合にしろ、今後同様の事例に対する判例として、非常に重要なものになります。
さて、今回の敷引無効判決、どうやら敷引特約自体は慣例もあって有効だけど、敷引額が賃料の6ヶ月分だったというあたりが、消費者契約法10条に反して無効とされているようですね。(つまり「敷引特約」がいついかなる時も無効!というわけではない)。このような判例が出ることによるメリットは、「返還交渉の際に強気に出ることができる」「裁判をした場合に勝訴度がアップする」「賃貸借業界が契約の仕方を見直す」というところでしょうか。
敷金返還問題については、最近は新聞記事等で紹介されていたりするためか、みなさんの関心も高く、「敷金トラブル110番」という電話相談会を有志で開くと、鳴りっぱなしというくらいたくさんの電話がかかってきます。「契約書はこうなっているけど、消費者契約法があるから、私の敷金は返ってくるんでしょう?」と。
これが、なかなかそうはいかないんですよね。
1.「故意過失の損害や滞納家賃がなければ敷金は返ってくるものだ」という原則
2.当事者同士の契約は民法の「私的自治の原則」があるから有効
この2つが相反して存在しつつ、契約時の状況や賃貸借業界の慣習、借主の部屋の使い方etcがないまぜになっているので、フツーに管理会社に「消費者契約法で特約も無効だから返してね」と言っても「いやいやいや…」というような押し問答が繰り広げられるのがオチです。(なかには、本当にちゃんとした業者さんもありますよ~念のため)
だから、入居の際には契約内容をしっかり確認し、入退去の際に物件のチェックをちゃんとして、無茶な使い方をしないように気をつけて、敷金返還を請求するときに堂々とできるよう準備しておくことが大事です。自分の権利ばっかり主張しても、退去した後なので部屋をちゃんと使った証拠もない…では主張は通りづらいものです。
ちなみに、敷金返還請求の相手方はあくまでも大家(家主・オーナーさん)であって、管理会社でも仲介業者でもありません。したがって管理会社が煮え切らないときは大家さんと直接やりとりをしてみると一歩前進するかもしれません。もうひとつ、敷金返還請求権は部屋を明け渡して(カギの返還のこと)から初めて発生する権利です。退去前に主張の仕方を間違えないように気をつけたほうがいい場合もあるかもです。
親切な業者さんも多いので、部屋を借りるときは、良い物件だけでなく、良い不動産屋さんも選ぶんだという気持ちでいれば、その後の賃貸借ライフもきっと快適になるはずです。
最近のコメント